2007年02月03日

すゝむし

※「すゝむし」はマックロクロスケぢゃなくて鈴虫ね。

2000yen.jpg
ふと思ひ出しました。このブログに古典の假名の手書きをいくつか挙げてゐますが、そもそもの発端は 2000 年にこれが発行されたことにあったのでした。
小渕総理が発行したものの、全く一般に浸透することなくいつの間にか消えつつある紙幣。この裏に、源氏物語絵巻の一部分が掲載されてゐるわけです。
一体二千円札と源氏物語にどんな因果があるのか。陰から覗くやうな構図の紫式部の絵を選んだのは何故か。このミミズののたくったやうな曲線群はどう読むのか。殆どの今の日本人がこれを読めないのは、国語教育に問題があるのではないか。等々、支離滅裂に色々と考へたわけです。

で、色々ネットを漁って、源氏物語のこの字が載ってゐる資料を求め、それが源氏物語絵巻の「すゝむし」であることがわかりました。そして、これを国宝として所蔵してゐる五島美術館のここで少し拝めることがわかりました。

しかし、なにをけちけちしてゐるのでせうか。こんな風では詳細が見えません。古いものが大事なのはわかるけれども、別にスキャンしてネットに流したからといってその物理的価値が下がるわけでもないでせうに。
さういふことだから、現代の日本人が蕎麦屋の幟の文字を読めないやうな事態に陥るのです (違ふか ^^;)。

かういふのもありましたが、、、273,000 円ださうで、、、手が出ません。ノートマシンが新調できさうな値段。。。源氏物語絵巻にそこまでの魅力は感じてゐません w

sudumushi0.jpgところが最近入手した『平安かなの美』にたまたま載ってゐたりしました。携帯電話のカメラで撮ってしまへ (^0^)

この書は、藤原伊房(これふさ) の筆と伝へられてゐます。藤原伊房 (1030-1096) は、平安中期の書家で行成の孫。
書を嗜んでゐるわけではないのでもしかしたら見当違ひも甚だしいかもしれないけれども、あんまり美しいとは思へないなあ。。。
祖父の藤原行成は、小野道風、藤原佐理(すけまさ) とともに三蹟と称される人で、たしかに美しい書を残してゐます。


では早速解析してみませう。
sudumushi2.jpg
どうでせう?合ってゐるかしら?
くづし字の参考書をもとに解釈した文字を書くと次のやうになります。ちなみに画像といふかページは文章の途中で途切れてゐます。
すゝむし
十五夜農遊ふくれニ佛の於万へ
ニ宮於盤してハしち可くな可め
堂万ひつゝ念珠し堂万婦わ可支
あ万支ミ多ち二三人盤那多て万
徒るとてなら須あ可つ支の於とミ徒
のけ者ひなときこゆ佐万可ハり多る
いと那ミにいそ支あへ類いとあ者れな
流ニ連いのわ多り多万飛て無しの年
いとしけくみ堂流ゝゆふへ可那と
てわ連裳しの飛や可ニ念珠した

変体假名の嵐です。現代假名に書き換へると次のやうになります。
すゝむし
十五夜のゆふくれに佛のおまへ
に宮おはしてはしちかくなかめ
たまひつゝ念珠したまふわかき
あまきみたち二三人はなたてま
つるとてならすあかつきのおとみつ
のけはひなときこゆさまかはりたる
いとなみにいそきあへるいとあはれな
るにれいのわたりたまひてむしのね
いとしけくみたるゝゆふへかなと
てわれもしのひやかに念珠した

もう少し判り易くすると
すずむし
十五夜の夕暮れに 佛の御前に宮おはして 端近く眺めたまひつつ 念珠したまふ
若き尼ぎみたち 二三人 花たてまつるとて
鳴らす閼伽坏(あかつき)の音 水のけはひなど
聞ゆ様変りたる営みに急ぎあへる いとあはれなるに
例の渡りたまひて
「虫の音いとしげく乱るる夕べかな」とて
われも忍びやかに念珠した ...

結局のところ、五十歳になる光源氏が、疎遠になって宗教にハマってゐる二番目の正妻の女三宮に言ひ寄り返すシーンであるらしい。。。やっぱり源氏物語自体には興味無いなあ。

当時のスズムシとはマツムシ (学名: Xenogryllus marmoratus) のことを言ってゐたらしく、逆にマツムシとはスズムシ (学名: Homoeogryllus japonicus) のことを言ってゐたとのこと。私には「チンチロリン」と聞えたことはないです。
posted by beu at 12:46| Comment(0) | 古典
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